◆ 目次 ◆ ———————————————————————-
(1) 所長だより
(2) 児童・生徒の理解と指導 ―教師の「視点取得能力」の獲得と育成を中心に―
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◇ 所長だより ◇
川崎市との学校支援事業と日本女子大学(4)
教職教育開発センター所長 田部俊充
川崎市との学校支援事業を核として、日本女子大学総合研究所の研究課題を2期にわたって進めました。
1期目の研究課題54「大学の総合力を発揮した地域連携活動の試み」(2012年4月1日~2015年3月31日)は、飯長喜一郎元心理学科教授が人間社会学部長として提案されました。飯長元教授のご退職にともない、2013年4月1日からの2年間は田部が代表者を努めました。
2014年7月17日に、研究課題54の総括シンポジウム「大学の総合力を発揮した地域連携活動の試み」を以下のように開催しました。
○豊明小との小大連携活動の概要(教育学科・田部俊充)
○地域連携による学生の学びの可能性―雑司ヶ谷での活動を通して―(住居学科・薬袋奈美子)
○寺尾台団地でのゼミを主体とした地域活動の成果と課題(社会福祉学科・黒岩亮子) ○学生による地域連携活動の課題と展望~サクラボと授業の間で~(心理学科 久東光代・星名由美)
筆者は、この総括シンポジウムにおいて、2014年度は学部1年生「学校インターンシップⅠ」、学部2年生「学校インターンシップⅡ」、「学校教育ボランティア」を継続したこと(9年目)を報告し、2014年度の授業研究協力については、附属豊明小学校において、2015年2月9日(月)10:30-12:00に5年生3クラスを対象に社会科における環境教育の出前授業、13:10-14:40に6年生3クラスを対象に社会科における国際理解教育の出前授業を実施したことを挙げました。
成果として、大学と附属小学校との研究協力が、教員だけでなく学生も交えて行えたこと、課題として研究の継続性と準備時間不足を指摘しました。(続く)
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◇ カリキュラム・マネジメントと総合的な学習の時間 ◇
家政学部児童学科特任教授 稲葉 秀哉
【6】各教科等の「見方・考え方」
(1) 「見方・考え方」の意味
新しい学習指導要領(平成29年告示)では、「教科横断的な視点からの教育課程の編成」に関連して、各教科等の「見方・考え方」が導入されました。学習指導要領の各解説において次のように述べられています。
「各教科等の『見方・考え方』は、『どのような視点で物事を捉え、どのような考え方で思考していくのか』というその教科等ならではの物事を捉える視点や考え方である。各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものであり、教科等の学習と社会をつなぐものであることから、児童生徒が学習や人生において『見方・考え方』を自在に働かせることができるようにすることにこそ、教師の専門性が発揮されることが求められること。」※1
(2) 各教科等を学ぶ本質的な意義
例えば、数学科における「見方・考え方」は「数学的な見方・考え方」として、「解説数学科編」において次のように述べられています。
「『数学的な見方・考え方』については、『事象を数量や図形及びそれらの関係などに着目して捉え、論理的、統合的・発展的に考えること』であると考えられる。
数学の学習では、『数学的な見方・考え方』を働かせながら、知識及び技能を習得したり、習得した知識及び技能を活用して探究したりすることにより、生きて働く知識となり、技能の習熟・熟達につながるとともに、より広い領域や複雑な事象の問題を解決するための思考力、判断力、表現力等や、自らの学びを振り返って次の学びに向かおうとする力などが育成され、このような学習を通じて、『数学的な見方・考え方』が更に確かで豊かなものとなっていくと考えられる。」
国語科における「見方・考え方」は「言葉による見方・考え方」として、「解説国語科編」において次のように述べられています。
「言葉による見方・考え方を働かせるとは、生徒が学習の中で、対象と言葉、言葉と言葉との関係を、言葉の意味、働き、使い方等に着目して捉えたり問い直したりして、言葉への自覚を高めることであると考えられる。様々な事象の内容を自然科学や社会科学等の視点から理解することを直接の学習目的としない国語科においては、言葉を通じた理解や表現及びそこで用いられる言葉そのものを学習対象としている。このため、『言葉による見方・考え方』を働かせることが、国語科において育成を目指す資質・能力をよりよく身に付けることにつながることとなる。
また、言語能力を育成する中心的な役割を担う国語科においては、言語活動を通して資質・能力を育成する。言語活動を通して、国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力を育成するとしているのは、この考え方を示したものである。」
(3)「見方・考え方」に視点を置いた教育課程の編成
各教科等の「見方・考え方」は、各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものとされています。
上記(2)で見たように、数学科における「数学的な見方・考え方」は、数学を学ぶ本質的な意義の中核をなすものです。国語科における「言葉による見方・考え方」は、国語を学ぶ本質的な意義の中核をなすものです。他の教科等においても同様です。
各教科等を学ぶ本質的な意義を考える上で、今一度「生きる力」※2の理念に立ち返ることが有効です。
「生きる力」における「確かな学力」(基礎的な知識・技能を習得し、それらを活用して、自ら考え、判断し、表現することにより、様々な問題に積極的に対応し、解決する力) の育成が各教科等の学習の本質的な目的であり、それが変化の激しい社会の中で主体的・協働的に生きていくために必要であるという基本理念に今一度立ち返る必要があると思われます。
そのように改めて捉え直すと、各教科等は、個別に(バラバラに)それぞれの目標に向かうのではなく、それぞれの教科等固有の特質を生かしながら、「見方・考え方」という視点(切り口)から「確かな学力」の育成という共通の目標に向かってアプローチしているという姿が望ましいカリキュラムの在り方であることが分かります。
各教科等で育成される資質・能力を「学びに向かう力・人間性等」「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」の三つの柱の視点から見るならば、各教科等の「見方・考え方」は「思考力・判断力・表現力等」に深く関わるものであり、伝統的な「教科カリキュラム」から「教科横断的カリキュラム」への移行を可能とする鍵としての位置付けにあるものとして捉えることのできるものです。(次号に続く)
【参考文献】
※1 学習指導要領の各解説の第1章 総説 1 改訂の経緯 (2)改訂の基本方針 ③「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の推進オから抜粋
※2 「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」(中央教育審議会第一次答申 平成8年7月19日)