◇◆ 目次 ◆◇ ——————————————————————
(1) 所長だより
(2) 教育時事アラカルト
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◇◆ 所長だより ◆◇
就任のご挨拶
教職教育開発センター所長 清水 睦美
この度、教職教育開発センターの所長に就任しました清水睦美です。
教職教育開発センターは、教員養成から現職教育まで、日本女子大学の在学生や卒業生を中心とする教職への幅広いサポート体制の構築を目指して活動しており、2010年4月の設立から11年が経過しました。
これまでの研究や支援の蓄積に学びつつ、さらに充実した活動が展開できるように尽力して参りたいと考えております。
本学は2021年に創立120周年を迎え、4月からは、西生田キャンパスより人間社会学部が目白に移転し、4学部15学科が一堂に会することになりました。学びの広がりという点で申し分ない環境が整ったわけです。
あわせて、本学では1学科を除く14学科で、中高免許の取得が可能であることに加えて、幼稚園教諭免許は児童学科、小学校教諭免許は教育学科、栄養教諭免許は食物学科で取得できます。ですから、教職課程履修に関わる活動は、全学に広がるものでもあります。
他方、教職は今日必ずしも人気の高い職業とは言えなくなっています。
かつて「教員」と言えば、男女不平等の社会の中にあって、最も男女平等が実現している職業であり、女性たちに大変人気があったことはよく知られるところです。
しかし、今日の学校現場は、このような側面よりも、労働の過酷さに注目があつまるようになっています。そこには、給特法と呼ばれる法律に支えられた異常なまでの長時間労働も含まれています。
しかしながら、そうしたなかにあっても、教職希望の学生が激減するということはありません。
そこに共通するのは、「子どもに寄り添いたい」という思いであるように感じます。親もとを離れた時、そこで最初に出会う社会的存在である「教員」は、子どもたちにとって、とても大きな存在です。だからこそ、教職希望者は、「子どもに寄り添いたい」と思うのでしょう。
日本女子大学は1901年の創立以来、初等・中等教育分野において多くの教員を輩出しています。教職希望の学生の願いを叶え、現職教員の悩みに答える、それらを通して豊かな学校現場を育てることに貢献したいと考えています。どうぞよろしくお願い申し上げます。
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◇◆ 教育時事アラカルト ◆◇
補助(副)教材の使用
-「教員の自由」否定される-
教職教育開発センター教授 坂田 仰
学校では、教科書のほか、ワークブックや辞書、資料集に始まり、教員作成のプリントの類まで、多くの教材が使われている。いわゆる補助教材、副教材である。
学校教育法は、学校では、「文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない」とした上で、教科書「以外の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる」として補助教材の使用を容認してる(34条1項、4項)。
公立学校の場合、
「教育委員会は、学校における教科書以外の教材の使用について、あらかじめ、教育委員会に届け出させ、又は教育委員会の承認を受けさせることとする定を設けるものとする」
と定められている(地方教育行政の組織及び運営に関する法律33条2項)。
学校を管理する教育委員会が、補助教材に関する最終的な決定権限を有していることがわかる。
だが、毎日使用する授業用プリントや新聞等について、全て教育委員会へ事前に届け出させることは、教員の勤務実態を考えると合理的とは言えない。
そこで、文部科学省は、全ての補助教材の使用について、事前の届け出や承認を求めたものではなく、教育委員会が関与すべきと判断したものについてだけ適切な措置をとるべきとする。したがって、対象から外された補助教材については、学校運営の最高責任者である校長の判断に委ねられることになる。
この点に関わって、資料プリント等分限免職取消訴訟がある(東京地方裁判所判決平成平成21年6月11日)。
公立中学校に勤務する社会科の教員が、個人攻撃とも受け取れる内容を含んだ資料を配布する等の行為を繰り返し、懲戒処分を受け、最終的に分限免職処分となった事案である。訴訟において教員は、補助教材の使用は教員の判断に委ねられるべきと主張している。
これに対し判決は、まず、生徒に学校や教員を選択する余地の乏しい公立の普通義務教育において、教育を行う立場にあることに言及する。
そして、「教育する対象である中学校の生徒らは、未発達の段階にあり、批判能力を十分備えていないため、教師の影響力が大きいことを考慮すれば、公正な判断力を養うという上記目標のためには、授業が公正、中立に行われることが強く要請される」とした。
その上で、「教師という立場で、特定の者を誹謗する記載のある本件資料を授業の教材として作成、配布することは、公正、中立に行われるべき公教育への信頼を直接損なうものであり、教育公務員としての職の信用を傷つけるとともに、その職全体の不名誉となる行為に当たるし、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行である」と断じている。