+‥【目次】‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
(1)目白が丘だより
(2)「卒業生ネットワーク」拡充に向けて
(3)卒業生発 リレーエッセイ
(4)研究・教育の現場から
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□■– 目白が丘だより ————■□
<< 教員採用試験対策講座 >>
教職教育開発センター教授 坂田 仰
8月,多くの自治体で教員採用試験の2次試験が進められている。教員の多忙化が叫ばれ,ブラックとメディアが喧伝する中,教員採用試験の倍率は大きく低下した。実質倍率が2倍を下回り,ボーダーフリーに近づいている自治体も存在するという。
しかし,教職に就くことを強く願い,採用試験に挑む学生は今も一定数存在する。教職一本に絞り,脇目も振らず学習に励む学生には頭が下がる思いである。
教職教育開発センターは,そういった学生を支援することが業務の一つになっている。8月中旬、1次試験に合格した学生に向けた直前対策講座が終了した。
一口に2次試験と言っても自治体によって千差万別,人物重視という点は共通していても,面接試験等でも聞かれる内容や採点基準は微妙に異なっている。 子どもとどう向き合うか等,心構えを重視する自治体もあれば,危機管理や不祥事防止等に力点を置く自治体も存在し,一筋縄ではいかない厄介な存在である。
本センターの直前対策講座は,この点を踏まえ,志望する自治体の特徴に合わせてオーダーメイドで実施するというのが最大の特徴である。
ただ,その分,計画から実施まで課題が山積みである。まず自治体毎の特徴を分析し,プログラムを作成する。毎年のフィードバックが欠かせない部分である。
そして,プログラムに合わせて,自治体毎に採用試験に精通した講師を探す。教職教育開発センターの人脈が試される部分であり,一番頭を悩ませている。
講師の皆さんの協力の下,今年も何とか無事に直前対策講座を実施することができた。後は合格発表を待つばかり。一人でも多くの学生が,「合格しました」と笑顔で報告してくれることを期待している。
とは言うものの,季節はもうすぐ秋。来年度の教員採用試験に向けたサイクルが間もなく始まる。だが,日本女子大学の将来構想が徐々に輪郭を表す中,教職教育開発センターの組織,位置づけも大きく変化するかもしれない。さて来年度の計画をどうしたものか。「去る者は静かに」という言葉をかみしめる毎日である。
□■– 「卒業生ネットワーク」拡充に向けて ————■□
<< 「教職志望学生と卒業生の交流会」を開催 >>
教職教育開発センター
7月号でもお知らせしましたが、教職を目指す学生と卒業生(現職教員)のつながりを深める試みとして10月16日(日)、「教員を目指す学生と学校現場で活躍する卒業生の交流会」(目白祭同時開催企画)を行います。学校現場で活躍されている卒業生の皆様には、教職志望学生の不安や疑問に答えていただくと共に、「教職の魅力」も伝えていただきたいと考えています。
創立120周年を迎え「森のキャンパス」として生まれ変わった母校に是非お越しください。詳細は、近日中に改めてお知らせいたします。
【教員を目指す学生と学校現場で活躍する卒業生の交流会】(目白祭同時開催企画)
○日時 2022年10月16日(日)13:00~15:00
○会場 日本女子大学 目白キャンパス 百年館 百203教室
□■– 卒業生発リレーエッセイ ————■□
<< 教員という生き方 >>
中村 千浩(栃木県教育委員会事務局 教育次長、文学部国文学科 1985年卒業)
上司としてお世話になった元教育長が、教員を前に次のようなお話をされた。記憶に残るその話の概要である。
「ある警察署長との会話の中で、『警察の方々は、24時間警察官であることにさらされている。これは大変なことですね。』と声をかけたところ、『私たちは警察官という生き方を選んだのであるから、大変なことはありません。』という答えが返ってきた。まさに我々も同じで、教職につくということは、教員という生き方を選んだということだ。」と話されたことが印象深い。
私も折に触れ、様々な職業の方々に御意見をうかがった。「生活の縁(よすが)ではあるが、それに止まらない自分自身の全てですね。」と即答してくださる方もいれば、「この職についていることによって自分の存在意義を確認できるもの。」と熱を持って答えてくださった方もいた。どれも皆各々の職業に誇りや自負心をもって挑む人々の力強い言葉である。
今、働き方改革が叫ばれ、ワーク・ライフ・バランスの重要性が増している。ひと昔前のように、帰宅してからも生徒や保護者からの相談があるようなことは敬遠され、24時間教員でいなければならないことの呪縛から解き放たれ、個々人の多面的な生き方が尊重されようとしている。
これから教員を目指す人にとって、これまでの「教員という生き方」は通用しないことなのかもしれない、との思いが頭をかすめることもあったが、自分自身の来し方行く末に思いを馳せるとき、このことだけは言える。教職につくということは、学校現場を離れても、現職を退いても、多くの教え子たちにとってはいつまでも、記憶の片隅に残る「先生」であるということだ。
今、身近なところでも、元生徒が、重要なポストについて大いに力を発揮している。あるいは、地元を離れそれぞれの分野での活躍を見聞きする。そのような姿に接するときに、常に大きなエネルギーをもらう。
教職につくということは、人の成長の一端に微力ながらも携わらせてもらった恩恵に浴することである。若かりし頃の数多くの失敗は、ときには反面教師でもあっただろうが、定年退職を前に改めてこれらの恩恵に感謝し、教職の魅力を伝えたい、と強く思う。
□■– 研究・教育の現場から ————■□
<< 教育の未来を託す想いで・・ >>
教育学科特任教授 宮井 和惠
今年も猛暑の中、新型コロナウイルス感染拡大の波を受けながらも、教員採用試験に向けて多くの学生が懸命に努力を重ねています。教員不足が叫ばれている昨今、教職を目指して頑張っている学生は、社会の「宝」のように思えてなりません。
大学の授業「教職基礎論」の中で、35年前の学校の様子を視聴してもらいました。それは、小学館が新入学児のために作成した学校紹介の映画。私が小学校担任時代、我がクラスの1年1組を中心に主な授業風景や行事等を、年間を通して撮影し、北海道や沖縄の小学校の様子も組み込んで作られたドキュメンタリー映画です。視聴させた目的は、教育の不易と流行について考えるためでした。
今の学校現場と比較しながら考察へと繋いだ結果「変わらない」というような声が受講生から多く挙がりました。なぜなら、教師の姿や児童の様子を様々な場面から見取り、そこから透けて見えてくる、時代を超えて変わらない価値あるものに気付いたからでした。 「不易と流行」という言葉は,松尾芭蕉の残した言葉とされています。「不易を知らざれば基立ちがたく,流行を知らざれば風新たならず」
私は、授業の他に教員採用試験に向けての指導を続けてきて、今年で7年目になります。この間、多くの卒業生が教育現場に羽ばたいていきました。教師になるためには資格取得や試験に合格しなければならないという難しさがありますが、良い教師であり続けるためにも難しさはあります。
今、社会の様々な側面から教育の可能性が問われています。教育現場で活躍している皆様には、仕事に対する構えをしっかりと持ち、時代の流れを見据えた的確な教育に力を注ぎながらも、教育には「どんなに社会が変化しようとも変わらない価値あるものがある」ことにも心を留めていただきたい。
そして、児童・生徒の成長過程に関わることの醍醐味を感じながら、日々進んでいかれることを心から願っています。