カモミールnetマガジン

2022年11月号

+‥【目次】‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
(1)目白が丘だより
(2)「卒業生ネットワーク」拡充に向けて
(3)卒業生発 リレーエッセイ
(4)研究・教育の現場から
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

□■– 目白が丘だより ————■□
<< 「教職」について考えなおす機会を得て  >>
          教職教育開発センター所長 清水睦美

 10・11月はセンター主催のイベントが続いたので、「教職」についてあらためて考えなおす機会に恵まれました。

 10月は目白祭のなかで、教職に就いている卒業生と教職希望の学生が直接出会う場をつくる交流会を企画し、卒業生11名、学生27名にご参加いただき大変盛況でした。目白祭期間ということもあり、「他大の学生ですが、教職に興味があるので、参加していいですか」という問い合わせもありました。

 交流会では、まず学生から自己紹介もかねて企画に参加した目的と困っていることや悩んでいることを話してもらい、後半は卒業生から学生の発言内容に絡みつつ自己紹介をいただきました。その後はフリーディスカッションの形で、学生が卒業生をつかまえて関心のある話題に花を咲かせておりました。

 参加学生は、就職を目前に控えた4年生や大学院生だけでなく、1年生の参加もあり、それぞれの学年相応に、仕事のイメージを卒業生から具体的に聞いている様子で、このような幅広い情報提供の必要性を感じる機会になりました。

  他方、11月5日には学内教職員向けに「〈シンポジウム〉日本女子大学の教職課程を考える」を開催いたしました。
 現在進んでいる学部学科再編において教職課程を取り下げる学科もある中、現行の本学の教職課程がどのように維持されてきたのかを確認すると同時に、今後の少子化を見据えた再編計画の中で、教職課程維持のための情報提供と、今後のあり方をめぐる意見交換の場として設定いたしました。

 シンポジウム開催までには、6月から①教職課程カリキュラムと②教職担当組織の2つのワーキンググループで検討を進め、シンポジウム当日には学長にもご参加いただき、今後の検討材料としていただくことをお願いしました。

 参加いただいたみなさまからは「大変勉強になった」という声が多く聞かれ、教職課程の維持や再編を考えていくきっかけづくりになったのではないかと考えています。

 こうしたイベントと併行して、2022年度教員採用試験の結果も続々集まってきました。最終的な二次試験合格数は昨年度を越える好成績となりました。  教員の働き方改革は道半ばであるように見受けられますが、そうした中でも、子どもにかかわる重要な仕事に、高い志をもって羽ばたいていく学生たちの姿に大変勇気づけられています。


□■– 「卒業生ネットワーク」拡充に向けて ————■□
<< 「教職志望学生と卒業生の交流会」を開催 >>
           教職教育開発センター 

 学生と卒業生(現職教員)のつながりを深めようと10月16日(日)、目白祭において「教員を目指す学生と学校現場で活躍する卒業生の交流会」を行いました。

 参加学生からは「教師になるか少し迷っていたが、話をする先生方の姿が輝いて見えて、私は教師になりたいんだと感じた」、「『スポンジのような心構えで』という言葉が腑に落ちた。悩むことがあっても今できることを少しずつ取り組みたい」等の前向きな感想が多く寄せられました。
 学生たちは、先輩方の熱い言葉で一歩踏み出せたようです。


□■– 卒業生発リレーエッセイ ————■□
<< 日本女子大学卒であることを誇りに思い、自信をもって進もう >>
          吉藤玲子 (元東京都公立小学校校長、
                                               帝京平成大学人文社会学部児童学科教授、
                                               文学部教育学科1984年卒業)

  久しぶりに目白祭に参加し、現役の学生の皆さんの、真摯な姿を拝見して、嬉しくなりました。教職教育開発センターに現役の学生と卒業生をつなぐ機会を設けていただいたことに感謝します。

 私は、日本女子大学の付属出身者で、長年、女子校で育ってきたために、社会に出る時には、ものすごく不安がありました。いきなり公立の教育現場で高学年の担任となり、奮闘の日々でした。しかしながら、企業ではなく教職を決断したことに悔いはありません。やりがいのある仕事に出会えたこと、退職しても何らかの形で人材育成に関わり続けられることを嬉しく思っています。

 長かった教員生活の中で私を変えてくれたことがあります。一つは、20代最後の年に学術休職を選び、半年間ニュージーランドに研修に行ったことです。当時は今ほど様々な外国語研修のプログラムがなかったので貴重な体験でした。日本人が一人もいない街で教育現場や現地の先生たちとの交流を通して多くのことを学ぶ機会をいただきました。

 もう一つは、30代から社会科教育の専門性を歩むことになったことです。きっかけは社会科を教えるのに苦労をしたことからですが、最終的には、全国小学校社会科研究協議会の会長も務めさせていただきました。

 文科省の仕事をはじめ、様々な会で女性が私だけであったり、女性初めてというポジションを経験したりしてきた教員生活でした。まだまだ日本は、教員になる割合は女性が多くてもその会のトップになるとほとんどが男性という現実があります。

 私がこのような立場になっても臆することなく仕事を続けてこられた原動力は日本女子大学で培った教育であると思っています。女子大であるがゆえに男性と比較されることなく学習し、発言してきた経験が社会で生かされてきました。「信念徹底」「自発創生」「共同奉仕」の教えは、未だに私の人生の指針です。

 きっと皆さんにも自分にしかできないことがあると思います。未来を創るのは、皆さんです。今こそ教育の必要性が問われている時代はありません。

 現在、教育現場に勤務されている方も、これから教職を目指す方もぜひ日本女子大学で学んだことを誇りに思い、活躍してほしいと切に願います。


□■– 研究・教育の現場から ————■□
<< 校内授業研修会の現状、カリキュラム・マネジメントの重要性 >>
          教育学科特任教授 宮下 治

[1 校内授業研修会の現状]

 日本の学校は、「授業研究」の校内研修会が盛んです。参加する多くの先生方は授業観察をしながら、気付いた点をメモするなどよくしている実態があります。  こうした我が国の同僚性に基づく校内研修、特に研究授業(授業研究)は、「レッスンスタディー( Lesson Study )」と呼ばれて、欧米やアジアを中心に世界的に普及をしてきています。

 つまり、日本の授業研究はすばらしいと諸外国から評価されているのです。確かに我が国の学校における校内授業研修会は、教員相互が協同的で一緒になって具体的な授業について協議を重ね、よりよい授業内容や授業方法の構築に向けて努力をしていると言えます。

 一方で、国立大学の附属学校や、教育委員会などの研究指定校などでは、研究のための授業研究になっていることも多く見受けられます。
 また、校内授業研修会においても授業担当の教員のみが授業を計画・実施・評価を受けるなど、一人の教員の授業力向上に止まってしまうことも多く見受けられます。  さらに、授業後の協議会においても、司会者・授業者・意見を述べる一部の教員の発言で終わることが多く、特に、若手の教員が意見を述べる機会が少ないという実態も多くの学校で見受けられます。

 つまり、校内授業研修会が研修会に参加している教員一人一人の授業力向上に十分に役立っているとは言えない実態もあると言わざるを得ません。
 そこで、校内授業研修会に参加する教員一人一人が積極的に研修会に参加し、一人一人の授業力向上につながる研修会の進め方を構築していくことが急務であると考えています。

[ 2 カリキュラム・マネジメントの重要性]

 各学校が、学校の教育目標をよりよく達成するために、組織としてカリキュラムを創り、動かし、変えていく、継続的かつ発展的な課題解決の営みの一つの有力な手段として、カリキュラム・マネジメントがあります。
 カリキュラム・マネジメントとは、カリキュラム(教育計画および日々の授業、それらの評価・改善)を通して行う学校づくりとも言えます。

 つまり、学校(授業を含む)としての課題を発見し、昨日よりも今日、一歩でも改善するために課題解決に取り組む発想が前提となります。
 河野(2005)は、カリキュラム・マネジメントを促進するための一つの手法として「概念化シート」を考案し、学校内における現状分析に活用できることを提唱しています。これからの学校においては、このカリキュラム・マネジメントを実践していく力によって、学校経営、学年経営、学級経営、そして何よりも日々の授業そのものがよくなっていくものと考えています。

【文献】
・河野昭一:「体験活動における自立化と教師の支援について-『概念化』シートを活用した自己評価・他者評価を通して-」,鳴門教育大学大学院修士論文,2005.