+‥【目次】‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
(1)目白が丘だより
(2)「卒業生ネットワーク」拡充に向けて
(3)卒業生発 リレーエッセイ
(4)研究・教育の現場から
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□■– 目白が丘だより ————■□
<< 新生徒指導提要と教員採用試験 >>
教職教育開発センター教授 坂田 仰
教員採用試験では,毎年,生徒指導提要から出題される。生徒指導提要は,学校現場における生徒指導のバイブル的存在であり,採用試験においてその知識が求められるのはある意味当然と言えるだろう。
2022(令和4)年12月,その生徒指導提要が改訂された(新生徒指導提要)。2010(平成22)年に旧版が公にされて以来12年,この間の生徒指導を取り巻く環境の変化を受けて,「生徒指導の基本的な考え方や取組の方向性等を再整理するとともに,今日的な課題に対応していくため」の改訂とされる。
では,今日的な課題への対応はどのようになされたのであろうか。新生徒指導提要は,「生徒指導とは、児童生徒が、社会の中で自分らしく生きることができる存在へと、自発的・主体的に成長や発達する過程を支える教育活動のこと」と定義する。
そして,「生徒指導は、児童生徒一人一人の個性の発見とよさや可能性の伸長と社会的資質・能力の発達を支えると同時に、自己の幸福追求と社会に受け入れられる自己実現を支えること」が目的であるとしている。
価値観の多様化の進行,こども基本法の制定を受け,子どもの主体性,自己実現,自己決定を重視する方向に大きく舵を切ったことが分かる。
校則や制服の見直し等,学校現場は一足先に新生徒指導提要の考え方に呼応し始めているかに映る。だが,教員採用試験を受検する学生にとってはこれからが勝負である教員採用試験まで残すところ半年あまり,ここに来て知識の更新,発想の転換が求められることになる。
周知のように,旧生徒指導提要は,学校,教員が児童・生徒を一方的に指導するという側面が強かった。そこに子どもの主体性,自己決定を重視する生徒指導である。たとえるなら,一方通行型の生徒指導から,双方向型の生徒指導への転換がいきなり求められる状況と言える。受検者は,この発想の転換について行けるか。 今夏,筆記試験や面接試験,そして場面指導等,教員採用試験のあらゆる場面で,この点が試されることになる。
□■– 「卒業生ネットワーク」拡充に向けて ————■□
<< 「公開講座」で「学生と卒業生との懇談会」を開催 >>
教職教育開発センター
臨時号(1月13日付)でご案内したように、センターは2月18日(土)、公開講座「教員採用試験入門―教職を志す皆さんへ-」を開催します。講座は、「教員採用試験対策講座」(3年生対象)を2月からスタートするにあたり、教職を目指す学生に知っておいてほしい学校現場の情報を提供する講座として継続してきたものです。採用試験対策とは少し離れて、現在、学校が抱える課題をテーマに講演等を行います。今回は、「教員のワークライフバランス」をテーマに据えました。
併せて、講座後半で「学生と卒業生との懇談会」を企画しました。学生と質疑応答ができる形態をとるつもりです。また、学生との「懇談会」後は、卒業生とセンター教職員との「卒業生懇談会」も予定しております。卒業生同士で情報交換する機会として是非ご活用ください。詳細及び申込方法は臨時号(1月13日付)をご覧ください。
□■– 卒業生発リレーエッセイ ————■□
<< 全ての体験が学びの場 >>
田口洋子 (元東京都公立小学校校長、文学部教育学科1988年卒業)
私は附属中学から日本女子大学で学び、東京都公立小学校の教職に就きました。ただただ
突っ走ってきた40年間であり、とても充実した日々でした。
学生時代は全国大会を転戦しスキー部卒業と言われる程で、何とか免許状を取得しての教職スタートでした。持っているのは、成瀬先生の魂、誰にも負けない気力と体力、一つのことをやりぬいたという自信だけでした。
教職に就くと、子どもたちの笑顔や一生懸命な姿から得られる喜びは計り知れないものがありました。しかしながら、それを上回る悩みや苦労も限りなく、先輩の先生方の支えと、気力と体力だけで過ごす日々となっていきました。そんな私でしたが、いくつかのきっかけにより、仕事が楽しいと思えるようになりました。
まず、体育科教育について学んだことです。自分の得意分野の研究をすることや子どもたちの笑顔に繋げられることが楽しくなりました。校内だけではなく、都内、全国にまで研究の仲間が広がりました。そして次第に、その学びが他教科でも活かせるようになりました。
次に、子育てです。初任から数年で結婚し二児の母となりました。専業主婦になろうかという弱気や時間的な制限による焦燥感もありました。ところが、母親の目線から子どもを育てることに欲が出てきました。そして、保育園や小学校、スイミング等の対応や指導法はよきを学ぶ場となり、生活の全てが教材にあふれて見えるようになりました。また、子どもや親の喜びが互いの喜びとなることを体感し、家庭や地域を巻き込んだ教育を目指すようにもなりました。
振り返ると、どの職においても「子どもの笑顔のために」を念頭に、学び、判断し、様々な体験から学びとってきた日々でした。こんな私ですが、私の経験がお役にたてるならば、微力ながらお手伝いをさせていただきたいと思うこの頃です。
□■– 研究・教育の現場から ————■□
<< 教師としての成長-「自己申告」- >>
教育学科特任教授 松尾 廣文
この原稿をお読みの方は、教科指導、学級経営、学年経営、校務分掌等に日々ご活躍されている方だと思います。皆様に深く敬意を表します。
さて、3月、教職員の異動が内定し、自校への転入者の面談を行うとき、私が校長として必ず問うたことは次のことです。
「あなたの『強み』は何ですか?」
面談の目的はその人柄を知ることも勿論ですが、管理職として心がけているのは、その方が歩んできた人生の中で身につけた能力を確認することです。
ひとたび自校の職員になる人であるからには、その方の能力を最大限に発揮して頂きたいと考える故です。それが、その方のやりがい、生きがいにもつながっていくからです。
さらに言うならば、その人の能力を如何に資源として学校経営に活用するかという戦略上の計算も校長としては勿論あるのです。
この原稿をお読みの皆さんはどんな「強み」をもっている方なのだろうと想像しつつ、原稿を書き進めています。
教育実践を積み重ねていく内に、徐々に自己の特性が磨かれていきます。
また、今までの教職経験で培った職歴、職能も勿論「強み」となります。
そういう意味で、この時期、お書きになるご自身の「自己申告(最終)」を改めて見直すことをお勧めします。
自己申告は、管理職に対しては勿論のこと、児童・生徒や地域、行政へのコミットメントです。達成が困難な絵空事は、約束しないことは勿論です。
達成への見込みをもち、約束したことは、多少の紆余曲折があろうと成し遂げるという意志が必要です。
自己申告に記した時点で、その具現化を図ることが業務目標となります。
過去の「自己申告」を見直せば、自分がその時々に進めていた業務内容が書かれており、その成果も記入されていると思います。
そして、ご自身の「業績評価」にどのように反映されているかも分かっていれば、尚更自分に
とっての「強み」が明確になってくると思います。
本年度を振り返り、「自己申告(最終)」をまとめながら、ご自身の「強み」を改めて考えてみてください。
卒業生の皆様がご自身の「強み」を発揮し、教師として順調にキャリアアップされていくことを期待しております。