+‥【目次】‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
(1)目白が丘だより
(2)「卒業生ネットワーク」拡充に向け
て (3)卒業生発 リレーエッセイ
(4)研究・教育の現場から
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□■– 目白が丘だより ————■□
<<卒業生に支えられる本学の教員養成 >>
教職教育開発センター所長 清水睦美
3月20日卒業式が行われました。天候にも恵まれ桜も満開に近く、それぞれの学生の旅立ちに彩りを添えていました。
この日、卒業証書授与式の後、教職課程の履修を終えた学生さんたちには、教育職員免許状の授与も行われました。このなかで4月より教職に就く学生は、幼稚園20名、小学校37名、中学校18名、高校8名の合計83名です。例年と大きく変わらない数のみなさんが、全国の幼小中高で教員としてスタートを切ることになります。
学校や教員をめぐる状況は必ずしも良いとは言えないのですが、そうした中にあっても、本学からは毎年相当数の学生が教職に就いていっております。これは本学が教員養成機関としての機能を弛まず積み重ねてきているからこそのことだと思います。
こうした営みを下支えしているものの一つには、卒業生との関係もあります。2022年秋に中高課程の学生の引率で、ある中学校を訪問した際、当該校の校長先生から「なぜ、教職を希望したのですか」という質問に、10数名いた学生のうち2人が「中学校(高校)で、お世話になった先生が日本女子大学の卒業で、とても憧れをもった。自分も専門性をしっかりと身に着けた教員になりたいと思ったから」と話しておりました。
教職に関わる伝統は、大学組織だけで作られるものではなく、卒業生の現場での仕事ぶりとも大きく関係するのだと、あらためて感慨深く感じ、2022年度印象深かった出来事の一つになっております。
さて、当センターでは、2024年度教員採用試験に向けた講座が始動しております。今年度は、幼小中高あわせて71名の学生が登録しております。講座の4分の3程度は終了し、教育実習が始まるまでには一次対策を終わる予定にしております。
教対講座は採用試験対策ではあるのですが、それを通して、学生さんたちは「教職に就くとは、どういうことか」を考える新たな機会になるようです。かれらの不安や悩みに寄り添い、希望へとつなぐ機会としていきたいと考えています。
□■– 「卒業生ネットワーク」拡充に向けて ————■□
<< 「公開講座」で「学生と卒業生との懇談会」を開催 >>
教職教育開発センター
センターは2月18日(土)、公開講座「教員採用試験入門―教職を志す皆さんへ-」を開催しました。
講演「教員のワークライフバランスの実情」(講師:柿本隆夫・大和市教育長)の後、「学生と卒業生の懇談会」を行いました。懇談会には東京都、横浜市、埼玉県、千葉県の幼・小・中・高校で活躍する卒業生8名が参加され、教職志望学生の相談に乗っていただきました。
□■– 卒業生発リレーエッセイ ————■□
<< 学び続けてほしい「何をどのように教えるか」 >>
酒井佳子(日本女子大学非常勤講師、元東京都公立中学校副校長、
家政学部家政理学科Ⅰ部数学系1985年卒業)
私は、1985年3月に、日本女子大学家政学部家政理学科Ⅰ部数学系を卒業し、その後、公立中学校で数学科教員として38年間勤務し、その間、副校長として管理職も経験しました。中学校に勤務する傍ら、研究的視点をもって、教育課題を改善していきたいと考えるようになり、大学院で学ぶ機会を得ました。
大学院で、私は、成瀬仁蔵先生の教育思想を学びました。成瀬先生は学習の方法を「印象・構成・発表」とされていましたが、これは現在のアクティブ・ラーニングに通じる当時の教育界の卓見と言えるものでした。また、成瀬先生はご自身の経験から、「自動的、研究的、進歩的」な教員養成の重要性を説いています。このような教育思想に基づいて創立された大学で学んだ教職志望の皆さんは、きっと教職を天職とし、児童・生徒の教育を担ってくれることと思います。
私は、教職に携わった者として、教職志望の皆さんを応援したいと思っていますので、教職に対して、相談したいことなどありましたら、目白祭の「教職志望学生と卒業生の交流会」などの機会を利用して、なんでもご相談ください。
さて、私は、現場での経験と、大学院での研究を経て、現在、理学部数物情報科学科で数学教育法の講座を担当し、大学生に教科指導の力を身に付けさせることに取り組んでいます。
教員は、未来を担う児童・生徒を育てるとてもやりがいのある仕事です。そして、教員は「何をどのように教えるか」ということに対して、学び続けることが求められます。在学中に、そのような教育を担うことに対する真摯な姿勢も学んで欲しいと思います。
□■– 研究・教育の現場から ————■□
<< ニュージーランド幼児教育研修を通して >>
児童学科特任教授 粂原 淳子
3月、本学の特色の一つである国際交流の一環として、児童学科においてニュージーランド幼児教育研修を実施し、院生5名、学生28名が参加しました。
研修の初めに、ワイカト大学において、NZの幼児教育カリキュラム「テ・ファリキ」と、「ラーニングストーリー」について、レクチャーを受けました。
講師は「ラーニングストーリー」を開発したウェンディ―・リー先生。直接、講義をうかがえる貴重な機会です。
「テ・ファリキ」は日本の幼稚園教育要領、保育所保育指針等にあたるもので、マオリ語で「編まれた織物」を意味します。「テ・ファリキ」は4つの原則と5つの要素を絡ませながら編むように構成されています。
紙面の都合上、詳細は検索していただければと思いますが、子どもの主体性やコミュニケーション力、個性を育むことを大切にした教育です。
また「ラーニングストーリー」は、一人一人の子どもが、遊びの中で取り組んだことを学びのプロセスとして写真とともに記録したものです。ワイカト大学内の保育所では、2週間に1枚程度、作成しているそうです。ファイルにして保育室に置かれ、保護者の誰もが手に取って見ることができます。ポジティブにつづられた「ラーニングストーリー」を通して、保護者も子ども理解や温かな関わりを学ぶとともに、子育ての喜びや全ての子どものよさを実感できます。
また、保護者も保育に参加するプレイセンターも見学することができました。我が子と一緒に登園し、保育にも参加します。慣れてくると、「ラーニングストーリー」の作成にも携わります。5歳の誕生日を迎えると、保護者と園が相談して時期を決め、小学校に進学していきます。満6歳までは幼児教育を受けることができますが、日本のように入学式などはありません。
遊びを通して主体性を育み、学びのプロセスを大切にする教育は日本の幼児教育と共通していますが、保護者の子育て支援の捉え方には、働き方の事情や教育のシステムの背景もあって、違いがあると感じます。保育サービスという考え方ではなく、保護者の保育への参画を促し、保護者と園が相互に支援をするという考え方は、こどもまんなか社会を目指す日本においても大切にしたい側面であると思います。
特別支援学校や小学校も視察し、学生の積極的な視察や質問、情報交換の姿が見られ、未来への希望を見る思いがしたニュージーランド幼児教育研修でした。