+‥【目次】‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
(1)目白が丘だより
(2)「卒業生ネットワーク」拡充に向けて
(3)卒業生発 リレーエッセイ
(4)研究・教育の現場から
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□■– 目白が丘だより ————■□
<<変更迫られる教職への道筋 >>
教職教育開発センター所長 清水睦美
2023年度の後期が始まり、大学校内も活気が戻ってきました。1年次から開講の「教育学概論」の授業では、「前期から教育に関わることをいろいろ学び、視野を広げてきたと思います。
この授業でも、新しく何を学べるか、今から楽しみです」や「後期から教職課程の履修を始めました。どんなことを学んでいくのか、学科の専門とは違う学びにワクワクしています」といった教職の学びに期待するリアクションがほとんどで、「教職不人気」という世の中の一般的ムードとは異なる雰囲気が教室には漂っています。
「学校」が子どもの生活の一部となる「学校化社会」の成立は1970年代とされます。それから50年、必ずしも強く意識されてきたわけではありませんが、子どもの生活を支える場として「学校」は機能してきています。
教職を検討する学生たちの中には、そのような学校の基盤となる機能に対して親近感があるように感じられ、「教職不人気」の中で何を強調して伝えていくのか、授業をする側も気が引き締まります。
他方、教員確保に向けて、各自治体が動きを加速してきており、教員採用試験を前倒しする自治体が相当数にのぼります。単に1-2ヶ月の5・6月採用試験という前倒しだけでなく、3年次受験を実施することを公表している自治体も10を超えています。
これまでの教職課程ではあたり前であった「教育実習をしてから採用試験」という流れではなくなり、採用試験を受験してから教育実習になるという流れに変わります。
いわば「教育実習で適性をみましょう」という前提を変更していかなければならなくなっており、教職課程の履修から教職への道筋のイメージの変更をしていかなければなりません。
教職教育開発センターでも、2024年度の教員採用試験の対策講座のスケジュールの見直しを行っています。あわせて「教職」という仕事について、1年次から情報提供する必要もあると考えています。
10月15日の「教員を目指す学生と卒業生の交流会」も、そのような場の一つになってほしいと考えています。奮ってご参加いただきたくお願いいたします。
□■– 「卒業生ネットワーク」拡充に向けて ————■□
<< 学生と卒業生との「交流会」を10月15日に開催 >>
教職教育開発センター
センターは10月15日(日)、「教員を目指す学生と学校現場で活躍する卒業生の交流会」(「目白祭」同日開催)を開催します。
試験日程の早期化や3年生からの受験も可能になるなど、教員採用試験が変化しており、学生も様々な情報を求めています。
一方、このような状況であるからこそ、制度変更に振り回されるのではなく「教職」という仕事について考えることも重要ではないでしょうか。
「交流会」では、学校現場で活躍されている皆様から教員志望の学生に直接、教職の楽しさや喜びを語っていただきたいと存じます。
多くの意欲ある学生を学校現場に送り出すため、お力添えをお願いいたします。
【日時】2023年10月15日(日)13:00~15:00
【会場】百年館低層棟3階 百305教室
【申し込み】申込フォームに入力・送信してください。
https://forms.office.com/r/c2v09ETLrL
□■– 卒業生発リレーエッセイ ————■□
<<学びの素晴らしさを次世代の子供たちへ>>
服部 みどり(前新宿区立戸塚第三小学校長 児童学科1980年卒業)
教員は皆、真面目です。そして、子供たちのことを一生懸命に考えて、指導にあたっています。でも、うまくいかないことがあります。その原因について考えてみました。
1つは、一人一人の子供ではなく「子供たち」という集団でとらえてしまう傾向にあることです。「指導案を書き、教材研究をし、発問を考え、板書計画をたてる」という準備をしているのに、授業を始めると、課題にうまく取り組むことができない子供が出てきてしまうことがあります。
子供達にはそれぞれに困り感があります。すべてに対応することは難しいのですが、落ち着きがなく聞き漏らしてしまいがちな子、書くことに苦手意識のある子、周囲の状況や環境に左右されがちな子など、指導する側が、子供たちの側に立って考えると、工夫・改善できることもあります。
タブレットとタッチペンを活用し、ゲーム感覚で質問に答えていくプログラムを取り入れたり、一人で取り組むことと友達と協力することのどちらもできる机の配置を考えたりすることも具体策の1つです。
大切なのは、教員が一人で授業をするのではなく、子供たちと一緒に学びを創り上げていくことだと思います。指導案を書く時間を少し削って、工夫してみましょう。
2つ目は、学びが次に繋がっているかどうかです。指導目標をもとに「今日のめあて」を示すことはもちろん大切なのですが、それに対して「振り返り」はしっかりと行われているでしょうか。
時間を確保し、子供たち一人一人が「今日の学び」を掴み取り、達成感を味わい、次の課題を見出し、手立てを考えられるようにすると、子供たちの学習意欲が高まり、自信や力になります。
ノートやタブレットを活用し、子供たち一人一人が自身のポートフォリオを作成していくことができるような道筋がつけられると良いと考えます。学びが蓄積されていくだけでなく、評価がしやすくなり他者との繋がりが生まれます。
繋がりは、子供だけでなく大人にとっても大切です。後輩の皆さんが、人と人との繋がりを大切にし、子供一人一人を温かく見つめ続け、次世代で活躍する子供たちを育んでいかれることを願っています。
私も、皆さんとの繋がりを深めていきたいと考えています。
□■– 研究・教育の現場から ————■□
<<「自分ができる」ことと、「教える」ことは違う >>
教育学科特任教授 土上 智子
私の専門は、書写・書道教育。
書写・書道とひとくくりにされることが多いが、実は、両者は似て非なるものである。
学習指導要領を見ればわかるとおり、小・中学校で指導するのは「国語科」の中の「書写」で、小学校3年生以上の「毛筆を使用する書写の指導は硬筆の能力の基礎を養うよう指導すること」と書かれている。書写の学習で身に付けた力を、各教科や日常の様々な場面で生かすことがねらいである。
そして、「書道」は、高等学校で学習する芸術科目「音楽」「美術」の選択肢の一つ、いわゆる「芸術」。「書写」と「書道」は、目指すところが全く違うのである。
さて、先生方の中には、「毛筆が下手だから、書写は教えられない。」という方がいるが、自分ができなければ教えられないのだろうか。
例えば小学校の体育、跳び箱等の学習で、先生が手本を見せなくても指導できていることを思い出してほしい。先生はこつを教え、子供たちはそれを基に練習する。先生からの助言だけでなく、友達同士で見合ったり工夫したりして、子供たちは自力で技を身に付けていく。
書写の学習も同様である。子供たちは、自分の文字の課題を自分で把握し、書き方を考え、身に付け、日常に生かせるようにしていく。
前期、2年生の国語科概論で、書写の指導法について授業をした。70名ほどの学生に、私が一人一人、朱墨で直して回ることはできない。私が書いて見せることもしない。準備、片づけ、説明も含めてなので、練習時間はわずか15分程。
しかし、最初に書いた「試し書き」と、最後に書いた「まとめ書き」を比較すると、ほぼ全員の学生が上達していた。
この日のねらいは、「筆順と字形」の関係について。私が教えたのは、その原理原則と効率的な練習方法のみ。学生の皆さんは、それを自ら考え、理解し、意識して練習したことで、わずかな練習時間であったにもかかわらず、自力で成長できたのである。
誰でも、得意、不得意があるのは当たり前。
できるに越したことはないが、できないことで自信をなくすのではなく、各教科・領域の指導法をしっかり身に付けることで、自信をもって子供たちの指導に当たってほしい。