+‥【目次】‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
(1)目白が丘だより
(2)「卒業生ネットワーク」拡充に向けて
(3)卒業生発 リレーエッセイ
(4)研究・教育の現場から
(5)センター活動報告
(6)編集後記
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□■– 目白が丘だより ————■□
<<未来の社会を見通す「教員の働き方」改革を >>
教職教育開発センター所長 清水 睦美
「教員の働き方」をめぐる動きが活発化しています。長時間労働を背景とする公立学校のなり手不足などが問題化するなかで、中央教育審議会の特別部会が「審議のまとめ」を5月13日に文部科学大臣に手渡しました。その主な柱は、「給特法」の改正によって、これまでの「教職調整額(残業代を出さない代わりに定額分を上乗せ支給するしくみ)」を「基本給の4%」から「10%以上」に増やすというものでした。この結論に対して、現場やこの問題に取り組んできた研究者などからは、大きな落胆の声が上がっています。『季刊教育法』(No.221)に「緊急論稿」として掲載される予定の広田照幸氏の「調整額10%では問題は片付かない」によれば、教職調整額10%の引き上げで補償されるのは1日40分弱とのことです。2022年に文科省が実施した教員勤務実態調査をもとにした計算では、小学校教員は1日平均180分、中学校教員は196分の超過勤務になっているというのですから、「何の解決にもならない」と言われるのは当然のように思います。
では、さらに調整額を増額すればいいのかといえば、そういうことではないのでしょう。なぜなら、「教職調整額」というしくみそのものが「定額働かせ放題」になっており、この仕組みを変えることが「教員の働き方」の抜本的な改革につながると考えられているからです。具体的には、義務標準法の改正や、教員の授業担当時間数に上限を設定することなどが提案されています(詳しくは、中嶋哲彦・広田照幸編著『教員の長時間勤務問題をどうする?』2024、世織書房)。
にもかかわらず、このような「教特法」の「教職調整額」の議論に関する報道のなかで、文科省は、NHKが「定額働かせ放題とも言われる枠組みは残る」と報じたことについて、初等中等教育局長名でホームページに抗議文を掲載しました(参照URL https://www.mext.go.jp/content/20240520-mxt_zaimu-000036054_01.pdf)。
これを受けて、現在は、この問題に対する文科省の姿勢が問われる事態になっています。特に、現職の教員や元教員からは、教員の長時間労働の問題を小手先の変更で見えにくくするだけで、問題は先送りされ、さらに問題の根が深くなるという声が多く聞かれます。
「教員の働き方」の問題は教員の労働問題ですが、子どもたちが通う学校が、多様性に満ちたインクルーシブな場になることを目指して、解決の道筋を考えていく必要があると思います。私たちがこの先の未来にどのような社会を創り出そうとするのか、それは、このような教員の労働問題の議論にも表れているように思います。
□■– 「卒業生ネットワーク」拡充に向けて ————■□
<< 今年度の卒業生と学生との交流について >>
教職教育開発センター
センターは、2022年度より教職志望学生と卒業生(現職教員)とが交流できる機会を設けてきました。今のところ目白祭同日開催企画「教員を目指す学生と学校現場で活躍する卒業生の交流会」(10月)と「公開講座」における「学生と卒業生の懇談会」(3月)の2回ですが、今年度も同企画を実施する予定です。
皆さんのご協力で、回を重ねるごとに学生の参加者も増えてまいりました。「教員の働き方」の改善が進まない中でも、本学の教職志望者は減りません。希望をもって学校現場に飛び込んでいく学生たちを是非、今年もご支援ください。次号で、交流会のご案内をする予定です。
□■–卒業生発 リレーエッセイ–■□
<<採用試験合格も、それから先の人生は長い>>
水上 洋子(晃陽学園高等学校、文学部史学科2008年3月卒業)
卒業して早16年。桜楓会結婚相談部のおかげで結婚し、子育てであっという間の年月でした。そして現在実家の筍掘り手伝いで疲れたところを愛猫にネコハラされつつ文章を考え始めております。
まず、私は卒業以来ずっと同じ私立通信制高校で働いていて「普通」の授業をしていません。その日登校した生徒がやりたい課題プリントを教科問わず対応するというちょっと特殊なものです。なのでこれまでの先輩方のようなためになる話はとても書けず、ただ現役子育て世代として感じたことでもと思うのですが…「読むだけ時間の無駄」という方はどうぞスクロールして飛ばして下さいませ。
教職志望学生と卒業生との「交流会」には実は初回からほぼ皆勤でして、毎回質問の傾向が大きく違って面白いです。直近では教採に関する質問がほとんどでしたが、そこで感じたのは合格がゴールになっているのでは?と。それから先の人生は長い。さらに女性は結婚妊娠出産でライフスタイルが激変する場合があります。そう言う私も学生時代は考えたこともなく、悪阻・点滴三昧・切迫流産絶対安静で全くまともに働けず、産後も子供の預け先問題etcなど実際経験しなければ分かりませんでした。保育園は競争熾烈、小学校に上がっても子供が登校してからの出勤だし、学童は満員。正直、子育てしながら働くのは厳しい時代です。
ですが私が非常勤講師をベースにして状況により学習補助員もする調整Wワークを選んだように、工夫しながら働き続けることは可能です。大抵の小中で募集しているボランティアとして関わることも。行事の飾り作りや読み聞かせ動画挿絵製作など楽しかったですよ。思わぬところで自分の持つ何かが役立って面白く、同時に趣味は大事だなと感じました。
さて結びは…人手不足にブラック職場と言われる中で最前線に立つ皆さんに「頑張ろう」などおこがましい。とはいえ文章力がなく思いつきません。…とりあえずおいしいものを食べてぐっすり眠るのはいかがでしょうか? 健康と体力の大事さを子育てしていると痛感します。特に旬のものはその時期必要な栄養素が…とどうやら冒頭の筍に戻ってしまいました。ですがそろそろ終わりなので、次は蕗、梅の収穫手伝いに行くとしましょう。
□■– 研究・教育の現場から ————■□
<<手書きのススメ①>>
教育学科特任教授 土上 智子
子どもたちには一人一台端末が与えられていますが、学校現場ではまだまだ手書きをする機会が多くあります。逆に、ICTの導入が進んだことにより、手書きの重要性が見直されているようです。
私たちのこれまでの生活を振り返っても、重要なことは敢えて手書きでメモを取ったり、暗記をするときは繰り返し書いて覚えたりしていたのではないでしょうか。
しかし自分だけが見るものであればいいのですが、人に見せるとなると文字を手書きすることに苦手意識を持っている人も多く、その理由としては、「下手」「手が疲れる」などがあるようです。
ここで、小学校学習指導要領国語科低学年の「書写」の内容を見てみましょう。
(ア)姿勢や筆記具の持ち方を正しくして書くこと。
(イ)点画の書き方や文字の形に注意しながら,筆順に従って丁寧に書くこと。
(ウ)点画相互の接し方や交わり方,長短や方向などに注意して,文字を正しく書くこと。
このように、小中学校の書写では「美しく」や「きれいに」書くことは求められていません。文字を書くことは伝達や記録の手段ですから、相手(時には自分だけ)に伝わればいいのです。ですから、文字の巧拙は気にすることではないのです。
そうは言っても上手に書けるようになりたいですよね。上手になる秘訣は、実は「見る力」が大きく影響しています。その証拠に、私は利き手でない左手でも毛筆である程度形の整った文字を書くことができます。それは、左手は書くための運動能力としては低いのですが、「見る力」によって、頭の中に正しい文字が記憶として残っているからです。
文字を上手に書けるようになりたい方は、日頃から「正しい文字」をよく見て書くことです。パソコンのフォントでは、教科書体、UDデジタル教科書体がおすすめです。
次回は、文字の認知と姿勢・筆記具の持ち方の関係、そして手の運動能力いわゆる「運筆力」を高め、「手が疲れる」課題の解決方法についてお話します。