カモミールnetマガジン

2024年11月号

+‥【目次】‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
(1)目白が丘だより
(2)「卒業生ネットワーク」拡充に向けて
(3)卒業生発 リレーエッセイ
(4)研究・教育の現場から
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□■– 目白が丘だより ————■□

<< 学校事故と刑事責任の追及 >>
            教職教育開発センター教授 坂田 仰

 2017(平成29)年3月、栃木県高等学校体育連盟登山専門部が企画した安全登山講習会で雪崩事故が発生し、生徒7名と教員1名、計8名の命が失われた。それから7年余り、講習会の中核を担っていた三人の教員に対して有罪判決が下された(宇都宮地方裁判所判決令和6年5月30日)。罪名は業務上過失致死傷罪(刑法211条)、禁錮2年の実刑判決である。判決の重さに栃木県下の学校現場では衝撃が走った。「自然災害でも刑務所に収監されるかもしれない。」という驚きである。

 学校で事故が起きた場合、学校の設置者、教員は、民事責任、刑事責任、行政責任(私立学校の場合,雇用契約に基づく責任)という三つの責任が追及される可能性がある。これまでは、民事責任の追及が中心であり、刑事責任の追及に至ることは比較的少なかった。しかし、近年、指導の態様が杜撰で、生徒が死亡するなどの被害が生じた場合、「刑事責任」を追及する動きが加速している。その中心になっているのが、「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする」と規定する、業務上過失致死傷罪、刑法211条である。
判決は、「単に講習生というだけではなく、学校教育活動等の一環として生徒や教諭としての立場で参加していた被害者らの安全確保」が強く求められているとする。その上で、今回事故が発生した講習会について、「学校教育活動時の集団行動における想定としては相当に緊張感を欠いた杜撰な情況の下に漫然と実施されるに至っていた」とし、当日プログラムを変更し、十分な下見等を怠り、活動領域等の事前説明すら明確に行わなかった被告らの行動を強く非難している。

 杜撰な運営実態については判決が非難するとおりであったかもしれない。しかし禁錮2年、しかも執行猶予なしの判決は、重すぎるのではないかという声も一部に存在している。通常、教員は、部活動の顧問に就任する際、刑事責任が及ぶ可能性がある等と微塵も考えていない。また、顧問への就任を促す管理職もこの点についての説明を行っていない。熱中症や落雷、津波等、大きな事故に発展する可能性のある災害が少なくないことを考えると、今後、危険を伴う行事や部活動の指導を拒否する教員が増えていくのではないかと危惧される。

 

□■– 「卒業生ネットワーク」拡充に向けて ————■□

<< 卒業生ネットワーク「カモミールnet」登録情報のご確認・変更のお願い >>

 過日お知らせいたしました通り、2024年10月1日より、教職教育開発センターのホームぺージが新しくなりました。

○リニューアル後のホームページはこちら→https://kyoshoku.jwu.ac.jp/

 それに伴い、「カモミールnet」登録情報の新システムへの移行も無事終了いたしましたことをご報告申し上げますとともに、移行に際しては皆さまからご協力を頂きましたこと心より感謝申し上げます。
 さて、皆様には新システム上での登録情報のご確認や修正などをお願いしております。まだ新システムでの登録情報のご確認・ご変更をおすみでない方は、お早目のご確認、ご変更をお願いいたします。

○ログインページはこちら→https://kyoshoku.jwu.ac.jp/member/login/

 ご確認・ご変更の手順につきましては、9月30日にお送りしたメールに記載しております。このメールには、「マイページ」にログインするための個人IDとパスワードが記載されております。

○送信元メールアドレス:kyoshoku@fc.jwu.ac.jp 
○件名:【重要】ホームページリニューアルのお知らせと登録情報ご確認のお願い(日本女子大学教職教育開発センター)

 もし、上記メールが届いていない方は、ご使用のメールソフトの「迷惑メールフォルダ」に自動で振り分けられていないか今一度ご確認下さい。そちらにも届いていない場合は、お手数ですが、センターまでご連絡いただきますようお願いいたします。

 また、ご使用のメールソフトでは@fc.jwu.ac.jpのドメインを受信可能な設定にしていただきますことも併せてお願い申し上げます。

○参考記事:卒業生ネットワーク「カモミールnet」新規登録・登録情報の確認や変更・登録解除の方法について→https://kyoshoku.jwu.ac.jp/2024/10/01/post-4821/

 ご不明点ございましたら、お気軽にセンター(kyoshoku@fc.jwu.ac.jp)までお問合せ下さい。
 今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

  
□■–卒業生 リレーエッセイ————■□

<<教員の仕事には終わりがない>>
       久家 さや加(目黒区立げっこうはらこども園副園長 人間社会学部教育学科2000年3月卒業 )     
 
 幼稚園教諭歴(公私立、国内外)も早20年。天職を自分で決めてよいのであれば、「この仕事は天職だ」と言いたい。理由は「この仕事が好き」だから。何故好きなのか。この仕事の大変さとして挙げられる「仕事に終わりがない」を元に少し考える。

 …結論から言うと、まさにそのとおりだ。
しかし、「だから大変だ」と続けるのか、「だから面白い」と続けるのかで、随分と異なる。どちらもあるが、私にとっては後者の割合が高い。
・やりたいこと、やるべきことを突き詰めようとすると、どうしても時間も能力も足りない。
・保育だけでなく事務仕事も多く、全ての仕事に、相手(子供、保護者、教職員、地域、教育委員会等)がいる。
・「どこまでやりたいのか」「どこまでできるのか」「どこまで必要なのか」など、相手や内容、能力、状況、時間、組織力…などで見極める必要がある。
・相手があることなので見極めても予想どおりにはいかない。
・幼稚園教育には教科書も正解もない。

これらは全て、「だから大変だ」の理由であり、「だから面白い」の理由でもある。

 管理職となった今、「だから大変だ」は上司、先輩、同僚に率直に尋ねればよいと思っている(公立園は他区の仲間の存在も大きな強みだ)。誰かに話せば、必ず道標を示してくれる。私たちは「組織」で仕事をしていて、決して一人ではないからだ。なお、私が常に心に留めているのは、かつての上司から常に御指導いただいていた「誰の、何のため?を明確にすること」である。

 本園には複数の外国籍幼児がいる。先日、日本語をほぼ話せないAさんが、入園後半年を経て初めて「クゲセンセ」と私の名前を呼んでくれた(これまでは「センセ」)。「わぁ!今、名前で呼んでくれた⁉うれし~っ!」と喜んでいたら、近くにいた他の幼児達が「Aさんが初めて久家先生って言った!」と一緒に喜んでくれた。少し離れた所にいた日本語が少し理解できるBさんは無言でAさんにこぶしを出し、グータッチした後、互いに親指を立てて微笑み合っていた。

「この仕事が好き」の瞬間が、この1分弱の中に3つも!

 教員の仕事に終わりはない。「だから面白い」を共有できる教職員育成、組織づくりのために、今、私は仕事に臨んでいる。そして、それを共有できる後輩との出会いも待っている!
 最後に…、「この仕事が好き」で、制限字数では足りない…。

 
□■– 研究・教育の現場から ————■□

<<教職への学生の意識>>
             教育学科特任教授 松尾 廣文 

 私の授業を履修している、教職中高免許取得を希望する主に1年生53名に教師の仕事に関するアンケートを行いました。
 教職課程を履修した経緯を確認したところ、83%が「自分で考えて決めた。」と回答をしています。多くの学生が自分で決めた教職履修ですが、教師に対して魅力を感じているかどうかを問うたところ、「ア,とても魅力を感じる」が16%、「イ,まあ魅力を感じる」が75%、「ウ, あまり魅力を感じない」9%、「エ, まったく魅力を感じない」が0%という回答でした。

 ア、イの肯定的な回答の理由(自由記述)としては、「生徒の成長を支えられる」「人格形成に関われる」といった教育の意義に関わるものや「学校が好き」「子どもが好き」「教えるのが好き」といった個人の適性に関わるもの、「収入が安定している」「育休・産休が充実」といった職のメリットに関わるものもみられました。中には、自分の経験から「子どもの心に残る」といった理由を挙げている学生もいました。

 反対にウの否定的な回答理由では、「仕事量が多い」「家に帰れない」「体力が不安」「ストレスが多い」「見合う賃金が得られない」「労働環境が改善されない」等、喧伝されているブラックな職種というイメージがうかがえました。

 教師に就くとしたら不安に感じる点を19項目から上位5点の選択で問うたところ、最も多い72%を集めたものが「保護者対応」でした。その後は、2位「仕事量」(60%)、3位「勤務時間」(58%)、4位「休暇取得」、「仕事上のストレス」(47%)、5位「収入」(34%)、6位「授業」(28%)」、7位「部活指導」(21%)、8位「生徒対応」、「健康リスク」(18%)と続いていました。

 不安で低かったものは、「社会的評価」「パワハラ・セクハラ」「リストラ」「仕事のノルマ」「将来の安定」「男女不平等」「研修」「(職場での)コミュニケーション」等でした。

 先日の目白祭では、学校現場で活躍する卒業生と学生の交流会が教職教育開発センターの企画で行われ、活気のある話し合いがもたれました。

 卒業生の皆様から、教師の魅力を熱意をもって語って頂き、教職に不安を感じている学生も感銘を受けたという感想が多く寄せられていました。

 私の授業も今回のアンケートを参考に、現場の課題とともにこれからの教師の在り方を考えられる時間にしたいと思います。