+‥【目次】‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
(1)目白が丘だより
(2)「卒業生ネットワーク」拡充に向けて
(3)卒業生発 リレーエッセイ
(4)研究・教育の現場から
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□■– 目白が丘だより ————■□
<<外国籍の子どもの就学 -権利と義務- >>
教職教育開発センター教授 坂田 仰
グローバル化の進展に伴い、外国籍の子どもが増えています。その就学義務はどう考えればよいのでしょうか。国際法的な視点からは、外国籍の子どもの就学も当然のことと考える向きもあります。たとえば、子どもの権利条約は,締約国に対して、「教育についての児童の権利を認めるものとし、この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するため」の措置を義務づけています(28条)。そして「初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする」としています。
日本の公立小学校、中学校は、国際法を重視し、保護者が就学を希望する場合、外国籍の子どもを積極的に受け入れています。市町村教育委員会は、就学年齢にある外国籍の子どもが住民基本台帳に記載されている場合、保護者等に対して「就学案内」を配布します。そして、保護者が希望する場合には、入学する学校を指定する等の措置をとることになります。日本国籍の子どもと同様、授業料は無償とされ、教科書の無償給付措置の対象にもなっています。また、学用品や学校給食等に関わる費用等については、就学援助を受けることも認められています。
では、就学の義務についてはどうでしょうか。この点に関して、公立中学校の校長が、外国籍の子どもの保護者から提出された退学届を受理したこと等について、義務教育を受ける権利等を侵害したとして、損害賠償を求めた事案が存在します(大阪地方裁判所判決平成20年9月26日)。判決は、国語や歴史の問題を念頭に、日本国憲法が規定する普通教育の内容を定めるに当たっては、民族固有の教育内容を排除することができないとします。そして、学校教育の特色、国籍や民族の違いを無視して、外国籍の子どもの保護者に対し、一律に日本の教育を押しつけることはできないとしています。義務教育を受けさせる義務を日本国民にのみに課せられたものと理解した上で、外国籍の子どもの保護者に対して民族固有の教育を受けさせる権利を認めたものと言えるでしょう。
□■– 「卒業生ネットワーク」拡充に向けて ————■□
<< 教職教育開発センター「閉所式」>>
メールマガジン1月号でお知らせしましたように教職教育開発センターは3月末で閉所いたします。4月より「教職総合センター」へと移行してまいりますが、15年にわたる教職教育開発センターとしての業務は終えることから3月21日、「閉所式」を行いました。
坂田仰教授がこれまで取り組んできた研究・開発活動、現職教員への支援、教職志望者への支援等の報告をされた後、初代センター所長の吉崎静夫・日本女子大学名誉教授から「センターの思い出」として「国際シンポジウム」や「教員免許状更新講習」の様子についてもお話しいただきました。続いて、大沼義彦・学務部長には新しい「教職総合センター」構想についてご説明いただき、これまでの活動も引き継がれていくことを確認いたしました。キャンパス統合をはじめ環境が変化する中、センターがその時々の状況や課題に応じた事業を進めることができましたのは、学内外の関係者の方々、そして特に卒業生の皆様にご尽力いただいたことが大きいと感じています。「閉所式」は平日でしたので、卒業生の皆様にお越しいただくことはかないませんでしたが、数名の方から温かなメッセージをいただきご披露いたしました。センタースタッフ一同、心より感謝申し上げます。
<< 教職教育開発センターHP 閲覧制限について>>
「教職総合センター」開設にあたり、現教職教育開発センターHP改修作業に入っております。つきましては、3月27日(木)午前11時~4月1日(火)午前11時まで、現HPの閲覧制限が生じます。ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承ください。
□■–卒業生 リレーエッセイ————■□
<<家庭科で日本の未来を変える >>
恒藤 碧(都立駒場高等学校、家政学部家政経済学科 2023年3月卒業)
「家庭科の教員を目指す理由は、家庭科で日本の未来を変えるためです。」と持論を展開したのは、2年半あまり前の教員採用試験の面接でのことでした。生活と密接にかかわる家庭科をしっかり学んだ子どもたちを社会に送り出すことで、日本の社会はもっと良くなると考えています。こんな考えを持つ私が、約2年家庭科の教員として大事にしてきたことを皆さんに伝えたいと思います。
●記憶に残る授業
常に「記憶に残る授業」を意識して授業内容を工夫しています。卒業してしまえば、授業の内容は大抵忘れてしまうのですが、「あ、なんかこれやったな」「先生がこう言っていたな」と記憶に留めてもらえるようにすることができれば、生活をより豊かにすることができると思います。
ライフプランの作成と価値観を養うためのグループワーク、災害時に役立つポリ袋調理や洗濯表示のかるた大会など・・・2限続きの授業の中で、いつも話合い活動や個人作業の時間を計画的に盛り込むようにしています。
●挑戦すること
初任の頃はわからないことだらけですが「何もわからないなりに積極的に自分から聞いたり挑戦したりする」ことが大切です。
この2年間で挑戦してきたことは、保育実習の実施、消費者トラブル防止CMシナリオコンテストの応募、飲食店とコラボした調理実習などです。
1年目や2年目は授業・分掌・部活と忙しくなりますが、そんな中でもフットワーク軽くいろいろなことに挑戦することで、大きな仕事を任されたり自分の成長にもつながったりします。「大変」な時こそ自分が「大きく変われるとき」です。
教員の仕事は大変で忙しいです。しかし、その分やりがいは大きく楽しいです。心も体も大切にしつつ、色々なことに挑戦してぜひ教員という仕事を楽しんでほしいです。皆さんも私と一緒に家庭科で日本の未来を変えて見せましょう!
□■– 研究・教育の現場から ————■□
<<就職を予定する大学生等の「育業」に関する意識調査から>>
児童学科特任教授 粂原 淳子
春は、別れと出会いの季節ですが、先日は本学においても卒業式が挙行され、卒業生が晴れやかな表情で大学生活に別れを告げ、新しい生活へと歩み始めました。
それぞれに夢や希望を抱き、自分の生き方を考えながらキャリアを積み重ねていくことでしょう。
東京都子供政策連携室が、令和6年度に行った『就職を予定する大学生等の「育業」に関する意識調査』では、「あなたが将来希望する世帯スタイル」として、子供を希望している学生は、男性53.4%、女性は52%と、男女共に約半数。個人的な見解ですが思った以上に少ないと感じます。
一方で、「育業取得率の高さ」や「育業期間の長さ」を「企業選択において重視」している学生は、男女ともに8割を超えているという調査結果もありますので、まだ身近な問題ではないけれど、可能性はあると考えている人は結構多いとも言えそうです。
東京都では、「育児休暇」を「仕事を休む期間」ではなく、「未来を担う子供を育てる大切で尊い仕事」であるというコンセプトから、「仕事」「努力して成し遂げること」という意味がある「業」を合わせて、「育休」ではなく「育業」を愛称としています。
しかし、もう1歩踏み込んで、「育業・育児」がその人のキャリアを磨いているという視点もほしいところです。例えば、育児を通して忍耐力や責任感、対人関係の構築、自己犠牲や他者への思いやりなど、社会生活において、重要な価値観や非認知能力が磨かれていきます。
そうした親としての学びは、仕事においても非常に役立つ力となるのではないでしょうか。
まだまだ「育業・育児」によりキャリアを失う、他者に後れをとるという考えがついて回る社会ですが、忍耐力や責任感は、プロジェクトの遂行やリーダーシップに、対人関係の構築力は円滑なコミュニケーションやチームワークにおいて大きな役割を果たします。時間管理能力や問題解決能力、柔軟性等は、仕事のパフォーマンス向上につながる可能性があります。
育業・育児にキャリアを奪われるという考えから解放され、男女共に、幅広い生き方が選択できる社会となり、卒業生が一層活躍されることを願っています。
<参照:就職を予定する大学生等の「育業」に関する意識調査>