カモミールnetマガジン

2025年11月号

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   カモミールnetマガジン 2025年 11月号        

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+‥【目次】‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
(1)目白が丘だより
(2)「卒業生ネットワーク」拡充に向けて
(3)卒業生発 リレーエッセイ
(4)研究・教育の現場から
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□■– 目白が丘だより ————■□  

<<全国学力・学習状況調査は何を教えてくれるか>>
          人間社会学部教育学科助教 砂田 大樹

 子どもたちの学力は、どのように測られ、授業にどう生かされているのでしょうか?

 10月19日、日本女子大学で「全国学力・学習状況調査の結果からわかる子どもの学力の実態と調査問題の活用」をテーマにシンポジウムを開催しました(主催:日本女子大学人間社会学部教育学科、共催:日本女子大学教職総合センター)。元国立教育政策研究所の学力調査官や教育学科特任教授など6名の専門家が、調査問題や調査結果の分析、授業への活用について議論しました。

 全国学力・学習状況調査は2007年から小学校第6学年、中学校第3学年を対象に実施され、国語,算数・数学は毎年、理科と英語(中学校のみ)は3年に1度行われています。ニュースでは正答率が話題になりますが、実は授業改善に役立つ情報も多く含まれています。 例えば、
•各問題には「解答類型」が設定され、正答・誤答の傾向や反応率を分析できます。
•報告書には「学習指導に当たって」や「授業アイディア例」など、授業で活用できるヒントが掲載されています。

 こうした学力調査の活用は、次期学習指導要領の議論とも深く関わっています。先日、教育課程企画特別部会論点整理がとりまとめられ、基本的な考え方が示されました。現在、各教科のワーキンググループが立ち上がり、具体的な検討が進んでいます。

 さらに、2024年度には中学校英語の一部が、2025年度には中学校理科の調査問題がCBT(Computer Based Testing)で実施されました。2027年度には、すべての校種・教科の調査がCBTに移行します。CBT化により、動画を活用するなど、これまでとは異なる調査問題が可能になり、思考力や表現力など、従来の紙テストでは測りにくかった力も評価できるようになります。ただし、授業で大切にしたいことは変わりません。

 子どもたちの学びを深める授業づくりのために、ぜひ全国学力・学習状況調査の問題や報告書をご覧ください。
  詳しくはこちら:https://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html


□■– 「卒業生ネットワーク」拡充に向けて ————■□  

<< 目白祭で教職を目指す学生と卒業生が交流 >>
                  教職総合センター 

 センターは10月19日(日)、「教員を目指す学生と学校現場で活躍する卒業生の交流会」(「目白祭」同日開催)を開催しました。

 4度目の開催となる今回は、卒業生14名と学生27名が交流しました。今年は1,2年生の参加も多く、教職への迷いがあったり、教職に興味はあるものの実態が分からず不安を感じている学生さんも多く見られましたが、具体的な採用試験対策や現場の先生方の実体験等の話に、「教員を目指したいという気持ちが強くなった。」「先輩方同士のリアルな話を伺い、大変だけれど楽しいというイメージが強まった。」「自分の将来について考える良い機会をいただいた。」「普段聞きにくいこともたくさん質問出来て良かった。」等前向きな感想が寄せられました。


□■–卒業生発 リレーエッセイ————■□  

<記憶に生き続けるということ>>
        岩間 わかな(船橋古和釜高校 国語科教諭 陸上競技部顧問、文学研究科日本文学専攻 2023年修了)  
  
 中学や高校の友達と久しぶりに会ったり、同窓会をしたりするとき、「あのときこんなことあったよね」「あの先生、いたよね」など、思い出話に花が咲くことはありませんか。いくつになっても、当時の先生の話題が出てきます。
ふと考えると、こんなふうに「記憶に生き続ける」職業は、他になかなかありません。良くも悪くも、それが教員の特別なところだと思います。
この「記憶に生き続ける」ということは、大きな責任を伴います。だからこそ日々、生徒の指導や支援について悩み、迷い、周囲に相談を重ねています。幸い、先生方は誰もが面倒見がよく、話を聞いてくれる環境に恵まれています。そうした人たちに支えられ、私は現在、高校の国語教員として三年目を迎えました。

 今回、学生時代にやっておいてよかったことを一つ挙げるなら、「教育現場を見る・知ること」です。それも、自分の希望する校種にこだわらず幅広く、です。私は学生のとき、千葉県の教職たまごプロジェクトという制度を利用し、中学校で毎週一度研修させていただきました。高校での指導・支援には、この時に見て・聞いて・感じたことが今も生きています。
教育は襷です。繋がりです。それぞれの校種の先生方が大切に繋いできた襷を、生徒の発達に合わせて、また次へ繋いでいく。繋ぐには、それまでの過程を知ることが大切です。だからこそ、後輩の皆さんには学生のうちにたくさんの現場を見て、感じてほしいと思います。知らないものは見えてきません。
 そんな襷の重みと温かさを感じながら、生徒たちが自立して旅立てるように、私も日々できることを考えています。
そしていま、子どもたちの成長を見守り、笑ったり泣いたり、心が動かされる愛おしい日々を過ごしています。

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※皆様の「卒業生 リレーエッセイ」投稿を募集しております。教職に就いて感じていらっしゃること、日々の教育実践、同世代や後輩たちに伝えたいことなどをご執筆ください。字数は600~800字です。投稿を希望される方はセンターまでご一報ください。お待ちしております。(教職総合センター)

 
□■– 研究・教育の現場から ————■□  

<<絵本の読み聞かせは幸せな記憶>>
           児童学科特任教授 粂原 淳子
 
 スマホ育児という言葉が定着し、乳幼児のスクリーン時間の増加が国際的な課題となっています。こうした中、子どもの生活における「アナログな時間」が再評価されています。

 絵本の読み聞かせもそのひとつです。ベネッセ教育総合研究所の調査によれば、幼児期に家庭で頻繁に読み聞かせを受けた子どもほど、小学生以降に自分で本を読むようになり、児童期に培われた読書行動は、中学1年時での「言葉スキル」や「論理性」を支えているという結果が示されています。

 また脳科学の視点からも、絵本の読み聞かせの効果が実証されています。子どもの大脳辺縁系に働き掛け、想像力や言語能力が高まり感情豊かになります。さらに読み手の側もコミュニケーション、感情のコントロールを司る前頭前野がより活発に働き、子どもと読み手の愛着関係によい影響をもたらしているのだそうです。確かに、怒りながら絵本を読む人はいませんから、絵本の読み聞かせは大人と子ども双方にとって、幸せな記憶をもたらすと言えますね。

 作家の柳田邦男さんは、「人は人生において三度、絵本を読み返すべきである」と述べています。幼い頃に読んでもらう時期、次は親になって子どもを育てるとき、そして人生の後半にもう一度手に取る時期。老いや病気や人生の起伏を振り返るとき、絵本から幼い日とはまた違ったメッセージを受け取ることがあります。絵本は子どもだけの文化ではなく、人生の節目に深い意味をもつということでしょう。

 デジタル機器に囲まれた時代だからこそ、絵本のページをめくりながら心を通い合わせるゆったりとした時間が、子どもと大人双方に、より大きな価値を持ち始めています。絵本の読み聞かせは、親子の絆を育むとともに、未来の学びの土台を形づくる営みとして、これからの時代にも確かな意義を持ち続けていくことと思います。

   参考文献 
     ベネッセ教育総合研究所 「幼児期から中学生の家庭教育調査縦断調査ダイジェスト版 ―幼児期から中学1年までの縦断調査データから、発達プロセスと保護者のかかわりを明らかにする―」(2023年9月) 
     河合隼雄・松居直・柳田邦男「絵本の力」(岩波書店)